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Frank Ocean 「Blonde」
category: - | author: hashimotosan
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    Frank Oceanの待望の新作「Blonde」。

    なんか凄そうだし、めちゃくちゃ話題だし、でも聴いてみたらよく分からない。

    そういう人も多いと思います。

    自分も最初に聴いた時は正直戸惑いました。

    期待が大きすぎたのもあるし、色んな付属情報が多すぎて作品に集中できないというのもありました。

    ただ何回か聴いているうちに、やはりこの男は只者ではない、これは素晴らしいアルバムだということが分かってきました。

    今回は、ここ数日「Blonde」をずっと聴いてきて自分が感じた思いを書いてみたいと思います。

     

    前作「channel ORANGE」をリリースする際、彼は同性愛者であることを告白しました。

    正確には女性も愛せるからバイセクシャル。

    ある夏に一人の男性と恋に落ち、色んな所へ行き、一緒にドラッグもやったし、セックスもした。

    オレンジ色はそんな彼との初恋の初夏をイメージさせる色なんだそう。

    実際アルバムの曲を聴くと、恋を歌った曲の相手は「she」ではなく「he」でした。

    アメリカの黒人男性、まして音楽業界にいる人間がカミングアウトをするというのは異例中の異例でした。

    どこかにマッチョイムズが根強く残っていて、ゲイは差別をされる対象。

    そんな中での彼の勇気ある告白も含め、このアルバムは世界中で絶賛されました。

    彼は歌唱力が特別にあるわけでもなく、ライブでのパフォーマンスの魅せ方も地味です。

    自分はロンドンで彼のライブを一度観たことがあるんですが、シンプルにキーボードの前に座り淡々と歌っていくようなスタイルでした。

    特にショウアップするようなこともなく。

    ただその時に感じたのは彼の声の空間の捕らえ方の凄さでした。

    歌唱力や声量が凄いわけではないのに、一瞬でその場の空気を掌握して人を引き付ける力が尋常じゃなかった。

    周りから変なものを見るような目で見られて過ごしてきた彼の恋愛体験。

    それがその声をより一層悲しく寂しく切なく響かせていたのかもしれません。

     

     

    そして今回新作「Blonde」のリリースに至るまで、実に様々な過程と長い時間を要しました。

    当初「Boys Don't Cry」というタイトルで進められていたこの作品。

    突然オフィシャルサイトが謎の映像にジャックされ、何かを加工する作業の様子が延々と流れる不思議な光景。

    それは「Endless」というビジュアルアルバムという形になり、私たちに届けられました。

    アンビエントミュージックが基礎にあるような、とてもモヤモヤしたサウンド。

    あくまでも映像のBGMという感じで、その音はモヤモヤの中で時折もの凄くクリアに聴こえる不思議な質感。

    James Blake、RadioheadのJonny Greenwood、Arcaといった音の錬金術師のようなメンツも参加して、非常に美しい世界観を作り出していました。

     

    その翌日についに「Blonde」が発表になりました。

    その際にこのアルバムのコントリビューターリストなるものが出回ったんですが、それを見てビックリ!


    そこにはBeyoncé、Kendrick Lamar、Kanye Westなどに加え、The Beatles、David Bowie、Elliott Smithの名前も。

    アルバムに参加してるアーティストに加え、このアルバムのインスピレーション源だったり、影響を与えたアーティストの名前がリストアップされています。

    そして彼はアルバムのリリースと同時に「Boys Don't Cry」という雑誌も発表しました。

    これはニューヨークやロンドンなどの4都市のみで手に入れることができるもので、彼が書いた文章や写真で構成されてるようです。

    とても大々的なリリース前の過程や、こういったとんでもないメンツの名前が記されたリストの流出、多角的な話題作り。

    そこに彼の狙いがあったのかなと思いました。

    下をくぐって歩けるほどに高くなったハードルの上を飛び越えるのではなく、その横を通過していくようなスタイル。

    結果としてかなりのプロモーションになったわけですからね。

    最近ではサプライズリリースはサプライズではなくなってきてますから、また新しい形のリリース形態としてとても頭の良い方法だなと思います。

    彼が歌っているのは自分の過去や体験、性格など非常にパーソナルな内容。

    別に他人に明かす必要のない恥部を堂々と晒しているんですよね。

    母親からの電話をそのまま収録している曲なんかもあり、そこには彼にドラッグをやってはいけませんと釘を刺す様子がそのまんま。

    ただすぐ次の曲で彼はマリファナ吸ってるんですが(笑)

    そんな感じで彼の少年時代から思春期、初恋をした19歳の夏、そしてアーティストとして成功した28歳の現在に至るまでの彼のありのままの姿がこのアルバムに記録されています。

     

    彼は本来は臆病な性格だと思うんです。

    マリファナやドラッグに手を出したのも、周りがみんなやってるから。

    仲間外れになりたくなかったから。

    彼と同い年のKendrick Lamarも、コンプトンという犯罪のメッカのような街で生まれ育った中で、周りの仲間たちと自分の感覚の違いに悩んだということを歌詞にしています。

    犯罪の多い街の出身者というだけで怖い人間だと思われ、本来の自分の性格とのギャップに悩み、益々塞ぎ込むようになっていく。

    Kendrickはそれをラップにして音楽にして吐き出すことで自分と折り合いをつけていました。

    Frankもそう。

    彼はルイジアナ州出身で、ここは奴隷制度時代の影響が色濃く残っていたような土地。

    先日もバトンルージュで痛々しい黒人射殺事件が起こったばかり。

    さらにハリケーン・カトリーナの被害をもろに受けた地域でもあり、ここに住む人々の心に大きな傷を残しています。

    彼は今回のアルバムリリースに際し、ある手記を公開しているんですが、そこには少年時代が自分にとって一番良い時代だったと書かれています。

    泣いてばかりいた思い出しかないけど、でも自分にとっては良い時代だった、と。

    今その頃の事を思い出して歌詞を書き、それを歌にする。

    Frank OceanもKendrick Lamarも自分の弱さや脆さを曲にして、音楽にして、作品にして消化しているんですよね。

    その辺が自分が彼らを好きな大きな理由ですね。

    それはやはり仲間の存在があったからというのも大きいんだと思います。

    KendrickもTop Dawg Entertainmentというレーベルの一員として、その仲間と強い絆で結ばれていますが、FrankもOdd Futureという場所があったから、自分の弱さを見せれたんじゃないかと思います。

    「Nikes」の歌詞でA$AP YamsやPimp C、そしてTrayvon Martinを追悼するところがありますが、Frankにとって彼らも仲間の1人だったのかもしれません。

     

    MiguelやThe Weekndなどの同世代のR&BシンガーとFrank Oceanはよく比較をされますが、彼らと決定的に違うのは色気や艶の部分かなと思います。

    Miguelは歌詞も含め、とても肉感的に性愛の悦びや快楽を生々しく表現するタイプ。

    The Weekndは非常に妖しく危険な香りが漂う雰囲気で、煙たさも感じる独特の色気があります。

    一方のFrank Oceanは、セックスやドラッグなど2人も同じく歌っているテーマなのにいやらしさをあまり感じません。

    声の余韻が残すのは色気ではなく、物悲しさだったり寂しさ、切なさのような響き。

    それは2人とは違い、恋の対象が男性が多いというのもあると思いますが、そこにFrank Ocean特有の色があるように感じます。

    Kanye Westの「The Life of Pablo」に収録されている「Wolves」、今は「Frank's Track」となっている曲で彼が聴かせたあの声。

    わずか30秒程度の曲なのに、一瞬で絶望すら感じさせる雰囲気に変える彼の天性のセンシティブな声。

    R&B界にセクシーを売りにできるシンガーがゴロゴロいる中で、Frank Oceanの存在は非常に特殊だなと思います。

     

    サウンドの面も触れておきましょう。

    彼のサウンドはR&Bが基本ながら、そこにエレクトロだったりロックだったり、様々な要素を取り混ぜたような不思議な感覚のサウンドです。

    それは先ほど挙げたコントリビューターリストのメンツを見ても分かるように、彼はかなりの音楽マニアであり、多くのジャンルから影響を受けているからなんですよね。

    彼が出した雑誌「Boys Don't Cry」の中で、自分のお気に入りソングのリストを公開しているようなんですが、それを見てもかなり多岐にわたっていることが分かります。

    http://genius.com/a/frank-ocean-lists-his-favorite-songs-in-boys-don-t-cry-magazine

    オートチューンが印象的な浮遊感のある「Nikes」、ドリーミーなギターのリフレインが心地良いJamie xx制作の「Ivy」、Pharrell制作のスムースなR&Bテイストの「Pink + White」、煙たさと儚さが同居したような質感の「Solo」、アコースティックでスカスカな感じが気持ち良い「Self Control」、「Pyramids」のようなエレクトロR&Bでエレキギターのフレーズが印象的な「Nights」、荘厳な空気感でストリングスとギターの音色がゴージャスな「Seigfried」、ゴスペルを思わせるサウンドがひたすらに美しい「Godspeed」など、実に多種多様なサウンドが収録されています。

    ただ一貫しているのはシンプルだということ。

    あくまでも彼の声が主役。

    今回多くの豪華なゲストが参加していることも話題になってはいますが、ちゃんと声が確認できるのは「Solo (Reprise)」のAndré 3000くらい。

    BeyoncéやJames Blake、ゴスペルシンガーのKim Burrellの声はバックコーラスで聴こえてくる程度という感じ。

    とにかくシンプルなんですよ。

    異なるジャンルのアーティストとのコラボで生まれる新たなサウンド、人種問題を扱った力強いメッセージソング、といった類の曲はありません。

    ただただ甘酸っぱい思い出を吐露したパーソナルな楽曲群という感じ。

    これには肩透かしを食らったという人も多いと思います。

    確かに分かりやすく良いなぁと思える音楽ではないのかもしれません。

    歌詞の意味を理解しないと100%楽しめない音楽なのは間違いありません。

    だからこそぜひとも歌詞を読んで聴いてみてほしいなと思います。

    自分も聴き取れない、分からない部分はgenius.comで調べてますが、曲の持つ切なさや儚さが見えてきて、このアルバムがとてつもなく美しいということに気付くはずです。

     

     

    長々と書いてきましたが、この作品に関してはまだ謎な部分も多く、情報量も膨大です。

    これからまた新たな展開もあるでしょう。

    雑誌にはバージョン違いの音源が入ったCDもコンパイルされているようで、そちらに収録されてる「Nikes」には日本人ラッパーのKOHHが参加していることも話題になっています。

    Frankは親日家で知られてますが、まさか日本人の声を自分の作品に乗せるとは驚きましたね。

    しかもまったく違和感なくKOHHのラップが曲に溶け込んでいて、聴いていてなんだか不思議でした。

    自分がFrank Oceanの音楽を聴いていつも思うのは、何にも覆われていない剥き出しのサウンドだなということです。

    自分の内面を歌詞にして、その時の感情を声にして、自分のすべてをさらけ出して音楽にする。

    それは本当に切なく、哀しく、孤独で、美しい世界です。

    彼はあまりミュージックビデオを作らないんですが、それは彼の頭の中の景色をそのまま映像にするのが難しいからなのかもしれません。

    曲がパーソナルすぎるから、彼はビデオではなく音楽で視覚的に訴えてくるんですよね。

    今回の「Blonde」を聴いてもそうでした。

    リリックのドキュメンタリー感の凄まじさ。

    声の圧倒的な説得力。

    あまりにも生々しくリアルな描写。

    Kendrick Lamarの「To Pimp A Butterfly」と同じようにインタビュー形式で終わるこのアルバム最後の曲「Futura Free」で、音楽を作ることは自分にとってセラピーだと言っています。

    だからこそここまで具体的な内容を歌詞にしてるんですよね。

    そして「How far is a light year?」という言葉でこのアルバムは締められています。

    1光年ってどれくらいの長さ?

    僕らはあとどれくらい進んでいくんだろう?

    僕らは今どこまで来たんだろう?

    様々な意味が考えられますが正解は分かりません。

    このアルバムを何度も聴き続けることでその正解までたどり着くかもしれません。

    自分について、家族について、恋人について、仲間について。

    彼はこのアルバムの中で、自分の大切なものについて歌っています。

    それは孤独で切ない思い出なのかもしれませんが、彼は一切ごまかすことなくありのままの声で歌っています。

    間違いなく今年を代表する素晴らしいアルバムですので、ぜひとも聴いてみてください。

     

    本日のBGM:Frank Ocean 「Pink + White」

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      フランクのblondeの記事をまだ多くの人が書いていないなと思い、探していたらここを見つけました。
      まだ曖昧なところが多く、フィジカルでの正式リリースも不明ですし、あのZineもフランクのお母さんの忠告通り待っていますが、現状はただただ、アルバムを聴き続けることしかできません。ただ、私は本当に幸せな気持ちです。徒然とフランクに対する思いをここに。
      ふと、フランクはいつアルバムを出すのかと海へ向かいながらChannel Orangeを聴いていると、タイミングよくリリースの噂を聞きつけたのがこの夏で、今ではBlondeを聴きながら車を走らせ、家でくつろぎ、毎日を過ごしています。もちろん最初は戸惑いはありました。Endlessも含めすごくなんだかもやもやしていて。
      ただ、COから4年の歳月を経てフランクもまた成長し様々な経験をしたんだと感じました。BlondeはCOのようにわかりやすいものではないですが、COでのあのオレンジ色の景色を、海を、ビーチを超え今では世界中のトリビュートを得て、フランクは感化され音楽と向き合ってるんだと私は感じました。Tumblrに投稿されたblondeに対する声明を読んで感じた部分もあります。でもやはりフランクらしくリリックに登場する言葉はシンプルだけど詩的で本当に何て美しいんだと感じました。和訳も待てないですが言葉の美しさはやはり英語を見ないと真には感じられないと思いました。
      ファンクやR&BやHiphopが、本当に色々なものが好きですがフランクは特別かもしれません。Kendrickもそう。音楽を通して感じるものは自分自身とも照らし合わされて感じられるもので、自分もより良くなれそうだと感じます。
      by indigoboy (2016/09/02 9:01 PM)






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