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2016年年間ベストアルバム 50位〜26位
category: - | author: hashimotosan
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    毎年この時期になると1年を振り返るんですが、今年は本当によく音楽を聴いたしライブにも行きました。

    素晴らしい新譜が出てそれを堪能する間もなく、すぐにまた素晴らしい作品が出て、耳が追い付かない贅沢な1年でしたね。

    というわけで今回は個人的な年間ベストアルバムを50枚ほど選んでみました。

    色んなメディアでこういう企画を目にしますが、自分のをいざ作ってみるとそれに似てきてしまうもので。

    でもしょうがない。

    そういう耳になっちゃったんだから。

    というか今年はこれはどうしても入れなきゃなというものが多すぎて、こういうラインナップにならざるを得なかったという感じ。

    ちょこっと感想などを書いてますが、短い文章で上手くまとめられなかったので25枚ずつに分けて書きました。

    ちなみにこのブログはPC用に書いてるものなので、スマホからはやや見づらいかも?

    スマホで見る方はPC版の表示で見た方がいいかもしれません。

    少々長くなってしまいましたが、最後までお付き合いいただければと思います。

    ではどうぞ!

     

     

     

    50. Japanese Breakfast 「Psychopomp」

     

    韓国のソウル生まれのMichelle Zaunerによるソロプロジェクト、Japanese Breakfastのデビュー作。

    元はフィラデルフィアでバンドを組んでいたんですが、母親の癌が発覚したと同時に母親の故郷であるオレゴンに戻り看病に専念していたんだそう。

    その後残念ながら母親は亡くなってしまうんですが、今作で彼女はそんな母親への想いを吐き出し歌に乗せています。

    キラキラのギターポップという感触の非常に爽やかなサウンドなんですが、その中身は彼女の苦悩や喪失感が生々しく渦巻いていて、聴き終わる頃には何とも言えない寂しげでやるせない余韻が。

    親しみやすいボーカルと、どこか懐かしい綺麗なメロディーが妙にクセになります。

    タイトルの「Psychopomp」とは、死後の世界へ死者を案内する天使や使者という意味。

    彼女はこの作品を作ることで、母親を天国へと送り届けたかったのかもしれません。

    母親が聴いても寂しい気持ちにならないように、敢えて明るく爽やかなサウンドにして。

     

    Best Track:「In Heaven」「The Woman That Loves You」「Triple 7」

     

     

    49. Kamaiyah 「A Good Night in the Ghetto」

     

    フィメールラッパーというと、Nicki Minajのようにセックスアピール全開で女性性をデフォルメしたようなスキャンダラスなイメージ。

    オークランド出身で現在24歳のKamaiyahは、普通の女性ラッパーとは一線を画すような存在。

    ルックスも声も男勝りな迫力で、男社会のヒップホップシーンでも女を売りにせず、絶対に自分を曲げないというような強めのアティチュード。

    リリックも地元の友人やコミュニティーを大事にしているフッドなものが多く、男性を喜ばす色気のある気の利いたフレーズは一切なし。

    今回のミックステープのサウンドは90sヒップホップやR&Bに強く影響を受けていて、随所に90年代らしいチープな音色が使われているのが印象的でした。

    ウェッサイヒップホップやG・ファンクのレイドバックな質感が懐かしくもありかえって新鮮な感じ。

    サウンドもリリックもフロウも個性的で、今後の活躍がとても楽しみな存在。

     

    Best Track:「Out the Bottle」「Come Back」「How Does It Feel」

     

     

    48. Dawn Richard 「REDemption」

     

    元Danity KaneのメンバーでもあるDawn Richardは、ソロデビュー以降、FKA twigsやKelelaと並びシーンで最も先鋭的な音作りをしているアーティストの一人だと思います。

    前作や今年発表のEP「Infrared」も非常に素晴らしい内容でしたが、3部作のラストを飾る今作もそのクオリティの高さは健在。

    R&Bを軸にハウスやエレクトロニカからロックサウンドまでを幅広く網羅したハイブリッドなサウンドは、程よい緊張感がありその切れ味は抜群。

    今作でタッグを組んだのはエレクトロニカ界の鬼才MachinedrumことTravis Stewart。

    エレクトロシーンの中でも異彩を放つ彼が手掛ける、ジャズやヒップホップをカットアップした実験的なサウンドは、彼女のBrandyライクなスムースなボーカルと不思議とマッチング。

    クールで洗練された一歩先のR&Bを聴きたいなら、彼女はぜひチェックした方が良いですね。

    早いペースで次から次へと挑戦的な音作りに取り組む彼女の攻めの姿勢は、もっと評価されてもいいよなぁなんて思ったり。

     

    Best Track:「LA」「Renegades」「The Louvre」

     

     

    47. Itasca 「Open to Chance」

     

    ロサンゼルスを拠点に活動している女性シンガーソングライター、ItascaことKayla Cohenの3枚目となるアルバム。

    Itascaとはミネソタ州にある地名で、アメリカ最大の川であるミシシッピ川の水源を意味しているんだそう。

    そんな名前を冠した彼女のサウンドは、川の流れのようにゆったり響き渡るカントリー・フォーク。

    心地良く鳴り響くフィンガーピッキングギターやペダルスティールの音色が疲れた心を癒してくれます。

    彼女のボーカルはどこか寂しげな感じで、素朴な質感のアコースティックサウンドの上で神秘的に響いています。

    とにかくシンプルに素材の良さを味わう感じ。

    ほとんどがギターの弾き語りだった前作も良かったですが、バンドとのアンサンブルでより表現力が豊かになった今作の方が好きですね。

    肌寒くなってきた秋から冬の澄み切った空気にピッタリのエヴァーグリーンなサウンドは、これからの季節に重宝しそう。

     

    Best Track:「Buddy」「Carousel」「Daylight Under My Wing」

     

     

    46. Nicolas Jaar 「Sirens」

     

    Nicolas Jaarの作る音楽は未だに何のジャンルにカテゴライズされるのか分かりません。

    エレクトロ、アンビエント、ジャズ、ヒップホップ、現代音楽などをぐちゃぐちゃに混ぜ合わせたような、とても抽象的なサウンド。

    人の話し声や生活音、物体が壊れる音や街の喧騒など、ありとあらゆる音を「音楽」として鳴らしてしまうその感覚はどう考えても普通じゃない。

    多種多様な文化や民族が入れ混じるニューヨークで生まれ育ったからなのか、そのサウンドセンスは都会的で折衷的なもの。

    無機質的でありながら、時折聴こえてくるピアノの音色はハッとするほど美しく、モノクロの世界に色を加えているかのよう。

    彼の声もボーカルというよりは楽器として機能している感じですね。

    荒々しささもありながら繊細、虚無的でありながら温かさもある、非常に複雑な耳触り。

    彼の頭の中を覗く感覚で何度も繰り返し聴いてしまう、不思議な魅力を持ったアルバムです

     

    Best Track:「Killing Time」「No」「History Lesson」

     

     

    45. Common 「Black America Again」

     

    黒人の銃殺事件が相次いだ今年、そしてアメリカ大統領選の直前にリリースされた、Commonの11枚目となるアルバム。

    今作はタイトルに冠されている通り、現在のアメリカ社会の抱える人種差別の問題がテーマ。

    さらに彼の地元であるシカゴは、ここ20年で最悪の殺人件数を記録していて、彼の愛する地元の人々の心は疲れ切っています。

    そんな怒れる人々の思いを代弁するようなラップとは対照的に、ジャジーでメロウなサウンドで非常に心地良いサウンドになっているのが興味深いところ。

    そのタクトを振るのは盟友Karriem Rigginsで、彼の洗練された優雅で美しいサウンドプロダクションの素晴らしさったらもう!

    Robert Glasperをはじめ、現在のジャズシーンの手練れ達の演奏による、生音だからこそ生まれる緊迫感や説得力が、作品の持つ重いテーマをより克明に浮き上がらせているかのよう。

    とにかく贅沢でゴージャスな音色というか、多分相当レベル高いことやってますね。

    トランプが大統領候補に選出され、結果的により意味合いを深めた感のあるこの作品は、今だからこそ聴く必要があると思います。

     

    Best Track:「Black America Again」「Love Star」「Red Wine」

     

     

    44. Porches 「Pool」

     

    収録楽曲全てを自宅で録音したという、Aaron Maineによるソロプロジェクト、Porchesの2ndアルバムはいわゆるベッドルームミュージックと呼ばれるサウンド。
    打ち込みによる無機質なリズムが淡々と繰り返されると同時に、うわもののシンセのループが程よい浮遊感を生み出していて、聴いているとプカプカと浮いてどこかへ連れていかれるような感覚に。
    R&Bやチルウェイブ、そしてハウスミュージックとも手を繋いだ、クールな質感のポップスは非常に都会的。
    タイトルの「Pool」もそうだし「Underwater」という曲もあるように、テーマは「水」。
    でも海や川のように自然の水ではなく、人の手が加わった水。
    プールは本来、人が楽しむために存在するものだけど、この作品のそれはただ水が張られただけのようなイメージ。
    そんな寂しさがこの作品からは漂っている気がします。

    どこか味気ない冷めた感じの雰囲気が妙に気に入っちゃいました。


    Best Track:「Underwater」「Be Apart」「Glow」
     

     

    43. Weyes Blood 「Front Row Seat to Earth」

     

    自分は体調が悪くなると、落ち着いたトーンのフォークミュージックを無性に聴きたくなります。

    ニューヨーク出身で現在28歳のNatalie Meringによるソロプロジェクト、Weyes Bloodの4作目となる今作を最初に聴いた時も、ちょうど体調を崩していた時でした。

    フォークを基調としたアコースティックな質感と、涼しげで実験的なアート・ポップを融合させた不思議な世界観のサウンドが持ち味。

    そこに響くのは何とも神秘的な彼女のボーカルで、美しい余韻を残すような彼女の声質がスーッと心の中に沁み渡っていきます。

    ギターの軽やかな音色も、華麗なハープの音色も、聴こえてくる音すべてがとにかく優しく美しい。

    自分にとってはこういう作品を聴く事が、睡眠よりも薬よりも効果のある治療法なのかもしれません。

    それにしても普段どういう生活をしてたらこんな優雅で美しいサウンドを作れるんだろう?

     

    Best Track:「Do You Need My Love」「Generation Why」「Seven Words

     

     

    42. Mutual Benefit 「Skip a Sinking Stone」

     

    正直に言うと、このアルバムを最初から最後まで通して聴いた記憶がほとんどありません。

    聴いているうちに、あまりにも気持ち良くて途中で眠りに落ちてしまうから。

    Mutual Benefitの2作目となる今作は、フォーキーなんだけどドリーミーな不思議な質感のサウンド。
    牧歌的でありながら耽美的な美しさも持ち合わせたような、ここではないどこかの景色が浮かんでくるような。
    温かくてとろけてしまうようなストリングスの心地良さがアルバム全体を包んでいながらも、時折ふっと静寂のような現実感が現れて、夢が醒めていくような感覚に。
    味のある優しい彼の声とも相まって、聴いていると目の前にはただただ美しい世界が広がります。
    アルバムのタイトルはジャケットにも描かれているように、いわゆる「水切り」。
    子供の頃に川で石を投げて遊んだのを思い出させるような、どこか懐かしさを感じるサウンドでした。


    Best Track:「Skipping Stones」「Lost Dreamers」「Not for Nothing」
     

     

    41. DIIV 「Is the Is Are」

     

    ドリーミーでサイケデリックな質感のDIIVのギターポップサウンドは、一度ハマってしまうと中々抜け出せない魅力があります。
    ボーカルのZacharyは今作にも参加しているSky Ferreiraと長年にわたって恋人の関係で、現在は別れてしまったようですが、彼女との生活の影響もサウンドに色濃く表れているようです。
    というのも彼はヘロイン中毒者であり、所持により逮捕され、その後のリハビリ生活を支えたのがSky。
    どん底の状態でもがきながら制作した2作目となる今作は、長いトンネルの中をひたすら前に進んでいるような鬱屈とした印象に加え、疾走感も感じるような吹っ切れたサウンドなのが特徴です。

    とても統一感のあるサウンドなのにつかみどころのない印象なのは、今作のタイトル「Is the Is Are」が意味する、抽象的で意味のない響きとどこか通ずるところがあるような気がします。

    The War On DrugsといいReal Estateといい、自分はこういうサウンドにつくづく目がないなぁと改めて思いました。


    Best Track:「Under the Sun」「Dopamine」「Is the Is Are」

     

     

    40. Yuna 「Chapters」

     

    最近のR&Bのトレンドは、DrakeやThe Weeknd以降大量にフォロワーが現れた感のあるダウンテンポで妖しげな、ヒップホップやエレクトロとの距離も近いサウンド。
    そんな中で意外と少なかった毒気の無い、ひたすらにスムースなR&Bを届けてくれたのが、マレーシア出身のシンガー、Yunaの3枚目となるアルバムでした。
    ゆったりと体を預けたくなるようなスローなリズムと、Yunaの包容力のあるシルキーな歌声がとにかく心地良いです。
    UsherやJhené Aikoなど、ゲストの人選も相性も抜群で申し分なし。
    先行シングル「Places to Go」でのDJ Premierとの共演も、良いスパイスになっていますね。
    イスラム教徒であるYunaは、ドラッグは当然のことアルコールやセックスに関しても歌詞に描くことは許されないようで、だからこそ等身大の愛の形を彼女なりの言葉で歌っているんだそう。
    その辺もこの作品の他のR&Bとどこか違うと感じるポイントなのかもしれません。


    Best Track:「Lanes」「Crush」「Places to Go」

     

     

    39. Cass McCombs 「Mangy Love」

     

    カリフォルニア州出身で現在39歳のシンガーソングライター、Cass McCombsの8作目となるアルバム。

    どこか物悲しそうな憂いを感じる切ないメロディーを、味のある声で淡々と歌っています。

    渋いカントリーテイストの曲もあれば、80年代のAORのような雰囲気の曲もあったりして、非常にバリエーションに富んだサウンドになっていたのも面白かったですね。

    アルバム全体のトーンはジャケットの通りモノクロな質感で、聴いていると雨でも降ってきそうな感覚。

    ギターもボーカルもキーボードもドラムも、聴こえてくる全ての音に湿り気があるような。

    みすぼらしいとか汚いという意味の「Mangy」をアルバムタイトルにつけているように、ネガティブでひねくれた表現の多い歌詞もとてもユニークで、彼が歪んだ感覚の持ち主であることが分かります。

    派手さは一切ないですが、聴けば聴くほど味わいが増すようなザ・スルメアルバムです。

     

    Best Track:「Bum Bum Bum」「Opposite House」「Switch」

     

     

    38. KING 「We Are KING」

     

    Princeにもその才能を認められていたという3人組女性R&Bグループ、KINGの待望のデビュー作。
    アルバムデビュー前からRobert GlasperやJill Scottなど多くのアーティストの作品に携わっていて、今回のアルバムも総指揮をとっているのはメンバーのParis。
    ミネアポリス出身の彼女を中心に、ソウルやファンク、エレクトロの影響を受けた新感覚のR&Bサウンドと、美しいコーラスワークによって極上の音楽空間を作り上げています。
    アルバムのジャケット同様、トロピカルでどこかエキゾチックな雰囲気も漂うようなサウンドは、聴いているとまるで楽園にいるかのような心地良さ。
    レトロな雰囲気を残しつつ、未来的なサウンドへと落とし込める彼女達の力量は相当なレベルだなと思います。

    日本盤のジャケットではなぜか彼女達の姿が消されるという悲劇もありましたが、サウンドは変わらず素晴らしいのでまぁ良しとしましょう。


    Best Track:「The Greatest」「Carry On」「Hey (Extended Mix)」

     

     

    37. KAYTRANADA 「99.9%」

     

    多くのアーティストのリミックスをはじめ、プロデューサーとしても今最も注目されているハイチ出身のKAYTRANADAのデビュー作。
    ヒップホップを経由し、ファンクやジャズ、そしてエレクトロを絶妙なバランスでミックスしたような独特のサウンドが彼の特徴。
    とても折衷的な音なので、どんなアーティストの個性も活かすことができるのも魅力で、Anderson .PaakやAlunaGeorge、The InternetのSydやCraig Davidなど、多様な豪華参加ゲストとの相性も見事。
    彼はゲイであることをカミングアウトしているんですが、そのボーダレスな感覚がサウンドにも表れているのかもしれません。
    曲によって全くジャンルが異なるような多彩なサウンドで、統一感というのはまるでありません。
    ただ一貫しているのは、彼の天性ともいえる音選びの上手さ。
    参加ゲストに応じて、その個性を最大限に引き上げて、それを自分のサウンドとして料理してしまう。
    それを若干24歳の青年がやっているんだから驚きです。

    来年以降確実に彼がシーンの中心にいるはずなんで、要チェックです!


    Best Track:「One Too Many」「Glowed Up」「You're the One」

     

     

    36. NxWorries 「Yes Lawd!」

     

    今年「Malibu」をリリースしその後客演などでも大活躍のAnderson .Paakと、ヒップホッププロデューサーのKnxwledgeによるユニット、Nxworriesの待望のデビューアルバム。

    Knxwledgeが手掛けるトラックは、90年代ヒップホップ的な要素が強く、J DillaやMadlibなどを思わせるソウルフルでレイドバック感がありながらグルーヴィーなこれまでにありそうでなかったサウンド。

    当時のニューヨークのシーンを彷彿とさせる煙たい質感のサウンドは、非常に懐かしくもあり新鮮でもあります。

    それを自由自在に乗りこなすAnderson .Paakの歌ともラップとも言えないような独特のボーカル。

    遊び感覚で声を乗っけたような印象なんですよね。

    これは間違いなく彼の天性のリズム感覚によるものでしょうね。

    ゲストも一切なしで一貫して同じトーンのサウンドが続いていくんですが、決して単調にはなっていなくて、サンプリングネタの巧みな使い方や、遊び心のあるフレーズ選びによって全く飽きないんですよね。

    やっぱりStones Throwって凄いレーベルだわ。

     

    Best Track:「Lyk Dis」「Get Bigger / Do U Luv」「Suede」

     

     

    35. Andy Shauf 「The Party」

     

    Joni MitchellやNeil Young、そして去年もTobiass Jesso Jr.が素晴らしいアルバムを出しましたが、カナダという国は本当に優れたソングライターを育む土地柄のようで。

    Andy Shaufも同じくカナダ出身の非常に才能豊かなシンガーソングライター。

    雄大な山々と豊かな森林を有するカナダの大自然で伸び伸びと育ったような色彩豊かなフォークサウンド。
    このアルバムで鳴っているギターやピアノ、ストリングスのどれもが本当に瑞々しいんですよね。
    今作はタイトルにもなっているように、あるパーティーで起こる様々な出来事や人間関係を、ユニークな世界観で描いた物語が軸になっているんですが、音楽も含めとてもシネマティックというか、まるで映画を観ているような感覚のサウンドなんですよね。

    そして何より驚いたのが、ストリングス以外の楽器全てをAndyが一人で演奏しているということ。
    とても一人で演奏したとは思えない音の奥行きだったり、まとまりだったり。
    本当にシンプルなんだけど、やっぱりそれが一番大切なのかもと気付かせてくれるような作品ですね。


    Best Track:「The Magician」「Quite Like You」「The Worst in You」

     

     

    34. Jamila Woods 「HEAVN」

     

    今年の音楽シーンを語る上で、シカゴという街を外すわけにはいきません。

    Chance the Rapperを中心に続々と若い才能が生まれていて、今やそれはムーブメントと言える盛り上がり。

    シカゴ出身で現在27歳のR&Bシンガー、Jamila Woodsもその内の一人。

    まるで森の中にいるようなマイナスイオンたっぷりのサウンドは、聴いていてホント癒されますね。

    彼女の声はスモーキーで味わい深い質感でありながら、滑らかさやキュートさも感じる不思議な魅力があります。

    Chanceはもちろんのこと、Donnie TrumpetやNoname、Sabaといったお馴染みのメンツも参加していて、この辺のファミリー感も心地良いサウンドの要因なのかなと。

    彼女は大学で黒人文化を学び、黒人女性の詩人から考え方や歌詞において大きな影響を受けたんだそう。

    黒人女性の美しさや強さ、そして自由をテーマにした今作は、今年大きな広がりを見せたBlack Lives Matterを体現した作品としてもとても意義深いものだと思います。

     

    Best Track:「VRY BLK」「HEAVN」「LSD」

     

     

    33. John K. Samson 「Winter Wheat」

     

    カナダ出身で現在43歳のシンガーソングライター、John K. Samsonの2作目となるアルバム。

    味のある声と優しく寄り添うように響くギターとで奏でられるフォーク。

    ピアノやチェロ、鍵盤ハーモニカなどの音色もそこに淡く優しいトーンの色を加えています。

    今作は彼の地元であるウィニペグという街でレコーディングされていて、冬になると−10℃以下になるという極寒の地域なんですが、そんな季節にもピッタリの温もりのある音が作品全体を包んでいます。

    タイトルの「Winter Wheat」とは、秋に種を蒔き冬にじっくりと成長し、春から初夏に収穫される小麦のこと。

    そんな小麦のように、派手さはないものの、地元に根差し厳しい環境で育まれた素朴な味のサウンドが今作の最大の魅力だと思います。

    これは最近知ったアルバムなんですが、聴いた瞬間に心を掴まれましたね。

    これから寒い冬の時期に部屋の中で暖を取りながら聴くのがとても楽しみな作品です。

     

    Best Track:「Select All Delete」「Winter Wheat」「Vampire Alberta Blues」

     

     

    32. Esperanza Spalding 「Emily's D+Evolution」

     

    Esperanza Spaldingはジャズベーシストとしての印象が強かったんですが、5作目となる今作ではその枠組みを超えて、1人のアーティストとして完全に覚醒したなと思いますね。
    アルバムのタイトルにもあるように、彼女のミドルネームのEmilyの進化(Evolution)と退化(Devolution)の過程を一枚に収めたコンセプチュアルな作品。
    まず聴いて驚いたのが彼女のシンガーとしての進化っぷり。
    伸び伸びと軽やかで自由に、まるで吟遊詩人のように楽しんで歌っている様子はJoni Mitchellのよう。
    作品によって様々なキャラクターやサウンドをいくつも演じ分けてきたDavid Bowieの右腕としても知られる、名匠Tony Viscontiをプロデューサーに迎えているのも面白いところ。
    今回の作品でも、彼女の別人格のようなEmilyという存在、そして大胆に取り入れられたロックテイストを、彼女の芯の部分であるジャズミュージシャンとしての面を活かしながら、上手く融合させた手腕は本当にお見事。
    ジャズファンだけじゃなく、ロックやファンク好きにもぜひ聴いてほしい作品ですね。


    Best Track:「Good Lava」「Earth to Heaven」「One」

     

     

    31. Kevin Morby 「Singing Saw」

     

    LAのサンラファエルという自然と都会が同居したような街で暮らしているというKevin Morby。
    曲の歌詞にも山や鳥などの自然が多く登場し、彼のインスピレーション源として非常に重要な意味を持つ土地らしく、今作のジャケットもそこでの散歩中に撮られたものなんだとか。
    古典的なフォークサウンドにジャズ的な解釈のピアノの音色が加わり、素朴な響きだけどしっかり作りこまれてるなぁという印象。

    ざらついたロックテイストの曲もあれば、美しいメロディーが堪能できる曲もあり、ソングライターとして相当レベル高いなぁと思いますね。
    その中で自由に響くBob Dylanのようなボーカルは決して上手いとは言えないけど、味わい深くてとっても好み。
    アルバムタイトルの「Singing Saw」とはミュージックソーとも呼ばれる音楽ノコギリのことで、今作でもその音色が使われているようです。
    音楽仲間たちとマイペースに音楽を楽しみながら作ったのが分かるサウンドで、気付くと再生回数を重ねていた不思議な魅力の作品です。


    Best Track:「I Have Been to the Mountain」「Dorothy」「Destroyer」

     

     

    30. Car Seat Headrest 「Teens of Denial」

     

    シアトル出身の現在23歳というWill Toledoのソロプロジェクトがバンド編成となりリリースした初の作品。
    17歳の時に自分の家の車の中でレコーディングを始めたというWill。
    ヒョロヒョロとした細長い体型にメガネ姿という、ナードを絵に描いたような風貌の青年ですが、彼のオタク気質な性格が生み出した風変わりなローファイサウンドに、不思議と引き込まれてしまうのがこのアルバムのポイント。
    彼のどこか屈折した難ありな性格が歌詞に色濃く反映されていて、文化系男子のさえない生活や、女子とのぎこちないやりとりなど、かなり具体的に過去を振り返ったような内容になってます。
    そんな歌詞が乗るのは、ゆるいながらもパワフルさも感じる骨太なガレージロックで、そこのギャップも面白いところ。
    所々に細かな遊びを入れたようなラフなサウンドなんですが、実はとてもメロディアスなんですよね。
    その辺の計算されていない上手さのようなところも、彼が今後ひと化けしそうな期待をしてしまう要因の一つですね。
    短いスパンで作品を作り続けている彼だけに、早くも次回作に期待してしまう素晴らしい作品でした。


    Best Track:「Fill in the Blank」「Vincent」「Drunk Drivers/Killer Whales」

     

     

    29. Jamie Isaac 「Couch Baby」

     

    移動中だったり休憩中だったり、パーティーの時だったり寝る前だったり、音楽を聴きたくなる瞬間は人それぞれだと思うけど、自分は夜に一人でお酒を飲みながら聴くのも結構好きでして。

    イギリス出身のSSW、Jamie Isaacのデビュー作はそんな時間のお酒の共として今年一番重宝した一枚かもしれません。

    よく比較されるJames Blakeとの違いはやっぱり声。

    一切やる気が感じられない無気力な質感のボーカルは、疲れてる身体にちょうど良い具合に心地良く響きます。

    Chet Baker由来のジャジーなピアノやトランペットの音色と浮遊感のあるギター、そこにダブステップやエレクトロが絶妙な味付けで加えられたチルアウトミュージックがとにかく気持ち良い。

    気怠くて甘くて冷たい空気が一気に部屋の中に充満するような感覚。

    タイトル通りソファでくつろいでお酒を飲みながら聴くのが正しい聴き方かなと。

    こんな洗練された音をまだ22歳の青年が作り上げてるんだから驚き!

    早熟すぎて行く末が心配になるくらいの才能を持った、要注目の存在です。

     

    Best Track:「Find the Words」「Cnt U See」「All My Days」

     

     

    28. Michael Kiwanuka 「Love & Hate」

     

    イギリス出身のMichael Kiwanukaは名前からも分かる通り、アフリカに起源をもつ黒人の生まれで、両親はウガンダ出身の移民。

    彼らは当時の政権への不信などから逃げるようにしてイギリスに来たんだそう。

    70sソウルやカントリー、フォーク由来の渋みのある土臭い風味のサウンドが彼の持ち味。

    2作目の今作ではブルースやゴスペルの要素が加わり、これまで以上にブラックミュージックを強調した音作りに。

    それを実現させたのはMichael Kiwanuka自身とDanger Mouseによるプロダクションで、優雅なストリングスや哀愁のあるギターやオルガンの音色を使うことで、音に重みや説得力をもたらしています。

    そんな豪華なサウンドの中でも彼のふくよかでざらついた質感のボーカルの存在感は際立っていて、アルバムタイトルのように愛と憎しみについて、黒人としての誇りや喜び、悲しみや怒りなどの様々な感情を声に乗せて歌っています。

    Marvin GayeやCurtis Mayfield、Bill Withersなどの先人達の息吹を継承する存在として、今後も非常に楽しみな存在。

    今年はイギリスのEU離脱という衝撃的なニュースがあったけど、その要因とも言われるのが根深く残る移民排斥感情。

    移民をルーツを持つ彼の思いが詰め込まれた今作が、EU離脱決定直後にイギリスで1位になったのは深い意義がある気がします。

     

    Best Track:「Cold Little Heart」「Black Man in a White World」「One More Night」

     

     

    27. The Weeknd 「Starboy」

     

    数年前、ドラッグをキメながら妖しく陰鬱なR&Bを歌っていたThe Weekndは、今や世界規模のポップスター。

    セルアウトだの、魂を売っただの、メインストリーム化したサウンドへの接近は多くのメディアや批評家の格好の餌食になります。

    彼の新作も恐らくあまり良い評価を得ないんでしょうが、自分はかなり好きでしたね。

    前作で見せたMichael Jackson由来のダンスミュージックはさらに磨きがかかっていて、ほのかに80sニューウェイヴの香りも。

    華やかなダンスフロアを彩るゴージャスなサウンドで容赦なく踊らせにかかってきます。

    お得意のメロディアスでセクシーなミディアムテンポのR&Bも、彼の美しいボーカルと相まって非常にハイクオリティな出来。

    Kendrick LamarやLana Del Reyといった相性抜群のゲストに加え、Daft Punkとの共演はやはり反則級の素晴らしさ!

    夜の深い時間のディスコのまどろんだ空気を思わす、甘美なキラーチューンは最高に気持ち良いですね。

    全18曲で70分弱の収録時間は確かにやや長い気もしますが、今の彼の全てが詰め込まれた聴き応えのある作品だなと思います。

    初期の頃の危険な香りのダークな地下空間サウンドが好きな自分としては、それは次回作以降に期待することにしましょう。

     

    Best Track:「Party Monster」「Secrets」「I Feel It Coming」

     

     

    26. Lambchop 「FLOTUS」

     

    長年ファンのバンドの路線変更に耐性はある方だと思うけど、Lambchopの新作を最初に聴いた時はさすがに戸惑いました。

    アコースティックなカントリーのイメージの彼らが今回挑戦したのはエレクトロミュージックとの融合で、ボーカルのほとんどが加工されたまるでBon Iverのようなサウンドは、得も言われぬ心地良い違和感が。

    フロントマンのKurtは昨年からHeCTAというエレクトロユニットを立ち上げていて、その変化の布石はあったんですが、あまりのサウンドの変化に戸惑いつつも、そのクオリティの高さは期待の遥か上を超えていました。

    彼は今作の影響源としてFrank OceanやKanye West、Shabazz Placesを挙げていて、それは愛する奥さんがこれまでのLambchopのサウンドがあまり好みではなく、そんな彼女にも気に入って聴いてもらえるようにとの思いからなんだそう。

    無機質に刻まれる打ち込みによるリズムトラックと、オートチューンのクールな質感の変調ボイス。

    そこにピアノとギターの美しいフレーズが絶妙なバランスで加えられ、いつまでも聴いていられる浮遊感のあるサウンドに。

    新しいことにチャレンジはしているんだけど、彼の持ち味であるサウンドセンスがちゃんと残されていて、Lambchopのサウンドとして成立させているのは本当にお見事だなと思いますね。

     

    Best Track:「In Care of 8675309」「Directions to the Can」「Relatives #2」

     

     

     

    というわけで25枚ほど選んでみました。

    あまり個性がないラインナップですいません。

    自分で見ても思います(笑)

    次回は上位25枚について書いてみます。

    よろしくお願いします!

     

    本日のBGM:J.Cole 「Change」

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